土地・建物は相続したいが借金は相続したくないときどうすればいいの?
2012.10.30 更新
相続は、プラスの財産だけでなくマイナスの財産である借金や連帯保証人も相続してしまうことはご存知でしょうか。
例えば、亡くなった方(注・被相続人といいます。)が、複数の消費者金融(注・いわゆるサラ金)から借金をしていた様子だけど、その借入先と借入金額が特定できないという場合があります。
マイナスの財産である借金、プラスの財産である土地・建物・預金等、どちらの額が大きいか判然としないときに、限定承認という制度を利用することができます。
相続によって得た財産の範囲内で返済できる限定承認
相続人は、負債の全額を承継しますが相続によって得た財産の範囲内で返済することになります。 つまり、1,000万円のプラスの財産があり、借金が2,000万円あったとしても、返済するのは1,000万を返済すれば良くなります。 限定されるのは「債務(負債)」ではなく「責任」ということになり、相続人が自身の財産を持ち出してまで返済をしなくて良いのです。
相続人が複数名いる場合に限定承認する場合は、全員が共同でしなければなりません。右の図だと、相続人はB、C、D、Eですが、全員が限定承認の手続きをする必要があります。
限定承認の注意点
亡くなってから3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。
例えば、右の図のCが、限定承認をする前に相続した土地や建物を売却してしまったり、Aが誰かに貸していたお金をBが回収してそれを使ってしまったようなときは、限定承認する意思がないものとみなされ、他の相続人も限定承認することができなくなります。それにより負債の全額につき相続人全員が連帯して返済責任を負うことになってしまいます。
また、相続人が自分の財産から負債の全額を弁済したとしても、責任のない部分についてやっぱり返してほしいということはできません。右の図だと、Bが自ら全額返済したときにC、D、Eが返金請求することができません。
限定承認の手続きの流れ
①相続人全員で、被相続人の最後の住民票上の住所を管轄する家庭裁判所へ、財産目録とともに申立書を提出します。(亡くなってから3か月以内に申し立てなければなりません。)
②家庭裁判所が、相続人の中から相続財産管理人を選任します。
③相続財産管理人は下記を付記して官報で公告します。
- 限定承認をした
- 2か月以内の期間を定めてその期間内に被相続人に対する債権を有する申し出をする
- その期間内に申し出をしなければ清算から除外する
④その後は下記のケースによって状況が変わります。
◆期間内に申し出がなかった場合
相続債務の支払いはしなくて済みます。
◆申し出があった場合(少額)
申し出額が少額であれば相続人は相続債務を支払って手続きを継続できます。
◆申し出額があった場合(多額)
相続財産管理人が家庭裁判所に鑑定人を選任してもらい、鑑定人の算出する相続財産額を限度としてその金額を弁済します。
相続人に弁済するお金がなければ、相続財産を競売して相続債務の弁済を行います。
実際の利用状況はどうなのか?
一見とても便利な制度に思えますが、実際のところ限定承認の制度はほとんど利用されていません。それは、手続きが非常に煩雑で面倒、時間がかかる、ということが挙げられます。
税金も独特の扱いになる
また、税金についても独特の扱いとなるため、税務の専門家である税理士に相談してみることをお勧めします。