保険金を受け取ったら借金も引き継がなければならないの?
2012.10.15 更新
保険金を受け取ったら借金も引き継がなければならないのでしょうか?ある家族のケースを見ていきましょう。
岡田太郎さん(68歳:仮名)は、妻・春子さん(65歳:仮名)と長男・一郎さん(35歳:仮名)と長女・春美さん(33歳:仮名)を残して亡くなってしまいました。
妻の春子さんは、体が弱く、入退院を繰り返しており、長女の春美さんが面倒をみてきました。
亡くなった太郎さんは、機械の部品を作る自営業を営んでいたため、会社が取引先と締結する契約の連帯保証人となっています。 また、つきあいで他人の借金の連帯保証人にもなっていました。
一郎さんと春美さんは、母の体調がすぐれないなか、このような責任は負いきれないと考えています。
できれば家庭裁判所に手続きをして、法的にも確実に相続放棄したいという意向です。
ところが、太郎さんは、妻・春子さん、長男・一郎さん、長女・春美さんをそれぞれ受取人と指定した生命保険に入っていました。
当然、春子さん、一郎さん、春美さんはこの保険金は受け取りたいのですが、 保険金を受け取っておきながら、借金だけ責任を逃れるということはできるのでしょうか?
生命保険金の契約内容によって出来ることが決まる
生命保険金は、土地や建物、預貯金などの遺産とはその性質を異にします。
生命保険契約がどのような内容か、つまり受取人が誰に指定されているかを確認しましょう。契約内容によって出来ることが決まってきます。
生命保険金の受取人確認方法
①受取人が「特定の個人」の場合(例えば「長男の一郎」など)
保険金を受け取っても相続放棄することができます。保険金が受取人固有の財産となるため、相続財産として扱われません。
②受取人が「相続人」の場合
受け取っても相続放棄することができます。①と同様で受取人固有の財産となるため、相続財産として扱われません。
相続分に応じて、相続人の間で分割します。
③受取人が「被相続人(亡くなった方)」の場合
亡くなった方自身と指定されている保険金を受け取ると、相続放棄することができません。
逆にいうと、相続放棄すると受け取ることができません。
保険契約をした本人自身のために契約したものとされ、生命保険金は被相続人の財産となり、相続財産として扱われます。 従って相続財産を放棄した相続人は受け取ることができないのです。
保険の内容を確認しないで受け取ると全責任を引き継いでしまう場合も
保険契約の内容をきちんと確認せずに、保険金を受け取ってしまうと、背負いたくなかった故人の全責任(借金など)も引き継いでしまうことになりかねません。 保険金の額で対応できる責任であれば問題ありませんが、そうでないとご自身の貯金から返済しなければいけない事態になってしまします。
相続放棄の手続きが認められたら、次に引き継ぐ人に知らせる
春子さん、一郎さん、春美さんが相続放棄すると、相続財産は太郎さんのご両親に引き継がれます。 ご両親がすでにお亡くなりであれば、太郎さんのご兄弟に引き継がれます。
つまり、春子さん、一郎さん、春美さんが相続放棄をすると、太郎さんの遺産も借金も太郎さんのご兄弟に引き継がれることになります。 相続放棄をしたら、次に遺産等を引き継ぐ方にその旨をお知らせをするととても親切です。